前回、鷹弘が同世代の高校野球選手だったことを知り、驚愕した春のチーム。

同じ時代の青年たちが、命を奪われていた現実・・取り戻せない時間を思い、花は嵐も自分の知る嵐でなくなっているのでは、と不安に襲われます。

冬のチームも加わり、春のチームはこの先どう進んでいくのでしょうかー

感想です☆




雨水の章3 「-草木萌動ー」



※以下、ネタバレあり※










 <現在地>
・春のチーム 神奈川県経ヶ岳シェルター
・夏のBチーム
ナツ・嵐・ 蝉丸・・東北へ
その他    ・・大分県由布岳シェルター
・秋のチーム 兵庫県神戸富士シェルター
・冬のチーム 神奈川県経ヶ岳シェルター





◎あらすじ◎

その日は朝早くから、新巻(あらまき)に付近を案内してもらった。
春のチームが畑を作った辺りは水没する場所らしい。
小屋を作った辺りは大丈夫ということだった。

他にも食べられるものなどを聞きながら、角又(つのまた)はそっと花(はな)たちに言う。
ここは少なくとも人が15年は住めたということだ・・少し安心した、と。
藤子(ふじこ)もうなづく。
放射能とか未知のウイルスがあるという訳ではなさそうだーと。

彼女はまだ新巻が新巻鷹弘(あらまきたかひろ)であることに懐疑的だったが、花と角又は彼は間違いなくエース新巻鷹弘だと確信していた。
彼と野球の話をした、と角又が言うのを聞き、花は野球の話は辛くないか・・?と新巻に尋ねる。

だってここにいたら、二度と甲子園にもメジャーにも行けない・・
そんな花の考えを理解したのか、新巻はほほ笑む。
確かにもう甲子園などには行けないかもしれない。
でも自分はそのためだけにやっている訳ではない。
野球が好きだから、そして一人じゃないなら、野球はきっとまたできるだろうー

それを聞いた花たちは安心し、吹雪(ふぶき)ほどの力はないけど野球をしよう、と盛り上がる。
またちさも、美鶴(みつる)の話をもっと聞きたい、と新巻にお願いした。
2人のことを話せるなんて、思いもしなかった・・
新巻の眼には涙がにじむ。

自分は2人のお墓も作ってあげられなかったから、2人の魂にも会いに行けなくて・・
彼がそう言うと、角又が口を開いた。
彼は常々日本の埋葬方法に疑問を持っているのだという。

それは人口の炎で焼き、コンクリートに閉じ込めるから。
それでは人は土に還らないのではないかー彼はそう話す。
人間は本来バクテリアなどに分解されて、土に還るべきだ、と述べる角又。

土に還り、大地に溶けた人々は、自然の中に一緒になって存在するようになる。
そうなれば水の中でも土の中でも、自然の至るところに死んだ人たちはいることになるのだー

いつでもそこにいるー
その言葉に、皆涙ぐむ。
嵐もそこにいるの?
花はそっと尋ねる。


その時、仔犬たちが戻ってきた。
彼らは木の燃えカスを咥えていた。
春のチームのものではないと知った新巻は、もしかしてーと皆に切り出す。

実は、ここに来る前に3人組に会ったということを・・。

彼らは夏のBチームと名乗った、と彼は言った。
藤子がシェルターに手紙を残した岩清水ナツ(いわしみずなつ)という人がいたか?と訊くが、新巻は怪しまれたので名前は聞けなかったのだ・・と苦笑する。

高校生くらいの男子2人と、中学生くらいの女子だったー
それを聞いていた花は、焚き付けに本の一部のようなものが使われていることに気付く。
その一文に見覚えがある気がして、彼女は考えた。

これは・・

すぐさま彼女は新巻に、男子2人の容貌を尋ねた。
すると新巻は、一人はスポーツマン風で、一人は不良っぽかったと話す。
スポーツマン・・
花はその男子の特徴を更に訊いた。

彼は身長は自分より高く、海でおぼれていたのを犬たちが助けたんだー
新巻はそう話した。
それを聞いた花は、落胆する。

嵐は水が得意だ。おぼれるはずがない。
・・嵐ではないのかー

新巻は更に、夏のBチームの仲間は九州にいて、関西には秋のチームがいるということを夏のBが教えてくれた、と話す。
それを聞いて喜ぶ一行。
連絡を取る手段を考えたいな。
久しぶりの明るいニュースに、皆の心は弾むのだった。


その後新巻に連れられて、彼らは岩塩の集まる場所も教えてもらった。
彼はなんとなく清潔な気がして、こういうところを拠点に今まで動いてきたのだという。

雨が降ってきたので、持てる分だけ持って、彼らは小屋へと戻る。
雨が降ると泥の中から動物が出てくることがある。
また出かけるなら午前中にすべきだー
新巻の話は、どれも為になるものだった。

その時ー
花はふと、木にくっついた青紫のじゅるじゅるしたものに触れてしまう。

気色悪いー
彼女はすぐにそれを払い、皆の後に続くのだった。


小屋に戻ると、彼女は持って帰ってきた焚き付けをもう一度眺めた。
やっぱり・・この文章は「ロビンソン・クルーソー」の上巻の一部ではないだろうか・・
彼女はリュックに下巻だけ持っていた。
上巻は嵐に返していたからだ。

偶然?
でもそんな偶然、この世界にあるのだろうかー

ふと手がかゆくなって、花は甲を掻いた。
偶然じゃなかったとしたら・・。
















嵐がいる可能性。

今回は新巻と共に、付近の状況を確認しに行く話でした。

嵐がいるとの確信は得られませんでしたが、思わぬ方向から嵐がいる可能性にたどり着くこととなりました。


まずは新巻の話から。

エース新巻鷹弘だったということで、一気に皆の中に入り込んだ新巻。
さすが15年さまよっただけあって、彼は豊富な情報を持っています。

一番遅く放出された春のチームには、これはかなり助かりますよね!
色々なことを試して生きてきたんだなー、というたくましい新巻のエピソードが色々見られて楽しかったです。

犬たちがいたことも、きっと危険から逃れるには良かったのでしょうね。
犬のほうが、そういう感覚は研ぎ澄まされていますからね。



そしてその道中で、野球のこと、吹雪や美鶴のことを話す新巻。
皆が聞いてくれることに、彼は温かい幸せを噛みしめます。
こんな日が来るとはーと。

そこは、やっぱり人間同士でなければできないことですもんね。
彼が一人どんな思いで生きていたのかを、思わせますね。

辛かった・・そんな言葉では済まされないでしょう。
本当に春のチームと出会えて、良かったですね。



そして角又流の死への考え方。
彼の考え方は元の世界では通用しないのかもしれませんが、この世界にいると胸に沁みるいい考えですね。
土に還ったものは、皆自然の中にいるー

きっとこの先も火葬なんてせず、土に還すことになるでしょう。
その時に、皆がそう思えるなら、少しは心も楽になるかと思います。

ここでは、人間も等しく自然の一部です。
感情があるので心との折り合いは難しいですが、そういうものである・・という認識は必要かもしれないですね。
人間の命だけが特別ということはない・・

この世界では、あくまでそれが前提となるのでしょうね。





さて、その後新巻は夏のBチームと遭遇した話をします。

やっぱり名前を聞いてなかったのですね・・なんていうことだ。。
ここで聞いておけば、嵐がいることがはっきりしたのに!!


ただ夏のBチームが残したと思われる「ロビンソン・クルーソー」の焚き付けが、思いがけない形で嵐の面影を漂わせます。

そう、両方の親が入れたと思われる、「ロビンソン・クルーソー」が2人を結び付けたのですー!


こういうささいなことが、この世界ではどれだけ支えになるか・・。
花は確信ではないまでも、嵐を探そうと思ったはずです。


後はこの経ヶ岳シェルターで雨季を乗り切ることができたら、東北を見て再び九州に戻ろうとする夏のBチームと出会うことができるかもしれませんね。

やっぱり落ち込んでいる嵐を救えるのは、花しかいないのでしょうか・・。
彼の精神安定のためにも、早く2人が出会えるといいですね。



最後に、花が触ったじゅるじゅるについて。

ラストの手にできたぶつぶつは、確実にこのじゅるじゅるによるものですよね。
一体何なのでしょう・・でも嫌な予感しかしないですよね。

この薬のない世界で(シェルターには少しあるのかな?)病気に冒されたら、大変なことになりますね。
あまり悪いものではないといいのですが・・女の子ですし。







さて、次回は花の体に異変が起きるのでしょうか。
また、彼女は嵐につながる情報を得ることもできるのでしょうか・・。

次なる波乱の予感ですね。。

次回も楽しみです☆