前回、父親の貴士が行ったことを知った花。
そのやり方に、安吾たちは怒りを露わにしました。

一方花も、両親が既に死んでいることを知り、泣き崩れます・・。

一体共同生活はどうなってしまうのでしょうかー

感想です☆





夏至の章16 「-渇くー」





※以下、ネタバレあり※












 <現在地>  
・春のチーム 
 花・ハル・新巻・のび太・・関東 夏のAの村
 角又・ひばり     ・・佐渡へ
 藤子・ちさ      ・・不明
・夏のAチーム 関東 夏のAの村
・夏のBチーム 海上
・秋のチーム  関東 夏のAの村




◎あらすじ◎

花(はな)は帰ってから、何度もマークの日記を読み返した。
貴士(たかし)の文字を探しながら・・。

彼女は龍宮シェルターに戻りたいと感じた。
両親の部屋に行ってみたいと感じた。
でも、あそこにはもう二度と戻れないのだー

花はそうして、父を思った。
龍宮シェルターで沢山の人の間引きを行った貴士。
夏のAに酷いことをした貴士先生。
彼女はそれが絶対に父ではない、とは言い切れなかった。

考えてみれば、彼女は父親のことを何も知らなかった。
役所で働く姿を見たこともない。
母親も、何の習い事に向かうのかを聞いたこともない。

両親は、ずっと嘘をついていたのだろうかー
呆然と、彼女はそう思った。

それから、花は自分の荷物を漁った。
何かメッセージはないのか。この状況を説明するものはないのか。
ーその時、リュックからクロスのネックレスが落ちた。

それは龍宮シェルターで犬が拾ったものだった。
母とお揃いだったネックレス。それは本当に母のものかもしれないー
彼女はそれを首につけるのだった。


と、そこへ蘭(らん)がやってきた。
彼女は花に、本当に何か知らないのかーと尋ねた。

こっちへ来たらどうしろとか、どこか行けとかヒントを聞いていないのかー
蘭のその言葉に、花は首を振る。
何も聞いていないー彼女がそう言うと、蘭は背を向けた。
何か思い出したら教えてー

そう言って、彼女は行ってしまう。
・・蘭とも、仲良くなれたと思っていたー。
花はうつむくのだった。

が、その時ー彼女は気づく。
秋のチームの皆が、自分を見ていることを。

彼らはどう思っているのだろう・・。
花は汗をかく。
蘭の言葉が、脳裏に響くー

私をここへ送り込んだ連中には、恨み骨髄ってことよー

そこに、新巻(あらまき)がやってきた。
花の当番を代わる、と声をかけられ、彼女は礼を言う。
だが花はその時思い出す。
新巻もまた、言ったのだ・・

恨んでも恨んでも飽き足りないー

ふと、ハルが呟いた。
ああ、だから彼氏もいるのかー。

彼は言う。
花の父親が、恋人を送り込んだのか、と。
その言葉に、花の胸は騒いだ。
ずるいと思う・・?
そうハルに問うと、彼は答えた。

信念持ってずるをするのが、大人じゃん。
親が決めたことだから、花には関係ないけどー

だがずるいとは思うのだ・・。
花は胸をぎゅっと締め付けられるのだった。


食事の当番を、新巻が代わった。
同じく安吾(あんご)の代理で、涼(りょう)が来ていた。
安吾はあれから熱を出して、寝込んでしまったのだという。

新巻は、涼に言う。
花の父親が何をしたかは分からないが、花には関係のないことじゃないかーと。
すると涼は返す。
皆がそう思えれば、戦争もテロも起きなかっただろう・・と。

一方安吾は、熱にうかされていた。
そんな中、彼は夢を見た。
茂(しげる)と一緒に熱を出した日のことを・・。

あの時、茂は自分もふらついているのに、安吾の世話を焼こうとした。
その結果具合が悪化して、2人で同じベッドで寝たのだ。

その時、彼らの体には変化があった。
それは貴士に授業で習ったことでもあった。
第二次性徴・・それはごく当たり前の変化で、子供を作るためのプロセスの一つだ、と貴士は話した。
そして動物たちの交尾を見学したりもしたのだー

そんな夢を見ていると、ひやっとした手が額に触れた。
それはあゆだった。
彼女は様子を見に来て、なかなか熱が下がらない、と笑う。

安吾が貴士の夢を見たというと、彼女は言った。
花が貴士の娘だと、聞いた・・と。
ただあゆは子供はあくまで別人格だから・・と納得しているようだった。

安吾はそれに少し驚き、でもあれはずるだ・・と語気を強める。
するとあゆはかっかすると熱が上がると微笑み、休むように彼に言うのだった。
その表情にー安吾はあゆの頬に手を伸ばす。

そして彼は彼女を抱きしめようとした。
驚いたあゆは、すぐにその腕を振りほどく。
彼女は嫌悪感を露わに、安吾に告げた。

確かに満月の夜は自分も抱きしめられてほっとした。
だからといって特別な何かではない。好きにできると思わないでーと。


そう言って、彼女は出ていく。
入れ替わりに、食事を持ってきた涼が入ってきた。
彼もまた安吾の顔色が悪いと言い、今は休むように話すのだった。

そこで食事を取りながらー安吾は尋ねる。
虹子(にじこ)とはどうなっているのか、と。
その意味に気付いた涼は、そういうことはしていない、と答える。
そして出ていったあゆの態度を思い、彼は安吾に注意した。

今はまだ妊娠・出産にはリスクがありすぎるから、自重しろーと。
女性が死んでしまったら、終わりなんだー
彼はそう言い、安吾を休ませて出てくるのだった。



翌日から溜池作りと井戸堀りを、分担して進め始めた。
回復した安吾は、まっすぐ花のところへ来て、スコップを渡す。
ずるして来たのだから、井戸は一人で掘れー
そう言われて、花は何も答えずスコップを手にする。

そうして彼女は一人で井戸を掘った。
お父さん、夏のAに何をしたの?
あたしがこっちで彼らに会うとは思わなかったの?
どんな目に遭わされるか、考えなかったのー?

花は皆のことを思い、胸を痛める。
秋の皆もよそよそしくなった。
新巻にも、どんな顔で会えばいいのか分からない。
お父さん・・ひどくないですかー?

彼女は思う。
どうして一言聞いてくれなかったのか。
ここに来たかった訳じゃない。シェルターに入る道だってあったのだから。

嵐(あらし)に会いたいー

必死に手を動かしながら、花は過去を思い出していた。
元々父は嵐を気に入っていなかった。
嵐の母親が亡くなってよくご飯を食べにくるようになっても、いつも無視だった。

母は、男親ってそんなものでしょうーと笑っていた。
それを聞いて、父にもそんな普通の感情があったんだ・・と意外に思ったなー


そんなことを思い出していると、突然朔也(さくや)が現れた。
彼は交代しようと来てくれたが、すぐに気づいた安吾に怒鳴られた。

目の敵にされている、と息をつく朔也。
自分は裏口入学みたいなものだから・・花がそう言うと、彼はそれなら他の人だってどんな理由で選ばれたか分かったもんじゃない、と言った。
ここに来たのが得というわけでもない、分からない人には言わせておけばいいのだー
彼はそう言って、穴を上がっていくのだった。

その言葉に、花は驚く。
ありがとう・・
彼女はそう言い、井戸掘りを頑張るのだった。


その後、遅くまで井戸堀りをした花は、ようやくシャワーを浴びた。
爪まで真っ黒になり、全身に疲れが巡っていた。
このシャワーも乾季には使えないだろうな・・
そう思っていると、突然安吾がドアを開けた。

シャワーはもう取り壊す。
そう言い、花を見る安吾。
花は叫び、体を隠したのだった。

ーそれから、雨はすっかり降らなくなった。
木々は枯れ始め、森の様相は一変した。
何本掘っても、井戸から水は出ない。

そして花が掘る姿を、安吾はいつも見ていた。
焦燥感が、彼らを包む。
安吾の苛立ちが募り、それが花に響いてくるー

水は出ない。

花は恐怖を感じて、震えた。
安吾の体から、熱が立ち上るのが見える。
目で殺されそうだー

・・ここを出よう。
その日、花は決意した。


そこで、彼女はまずハルにそのことを伝えに行った。
でも、ハルは小瑠璃(こるり)がいる。行かないかもしれないなー
花はそう思い、強くは誘わなかった。

のび太(のびた)も馴染んでいるし、新巻は誘う言葉が見つからない・・。
いっそ一人で行こうか・・
そう思っていると、ふと彼女は新巻に声をかけられた。

僕は誘ってくれないんですか?
彼はそう言って苦笑した。

彼は花が自分を避ける理由に気付いていた。
だからそのことをもう一度考えたと言い、新巻は話す。
花の父親は悪意から自分たちを選んだ訳ではない。
正しいかどうかは別として、花の両親は使命のために命を賭けていたー。

そう言い、彼は真っすぐ花を見つめる。
自分は15年間何か分からない何かを恨んで、生きて来た。
でもそれは花に出会ったあの日、消えてなくなったのだー。
新巻はそう言った。

だから自分も両親を恨まないし、花も恨まないで、と彼は笑った。
花が今ここにいるということは、両親に愛された証拠なのだからーと。

その言葉に、花の瞳からは涙が流れた。
するとそこに、ハルもやってきた。
彼は自分も行くし、のび太もきっと来るはずだ、と話す。

今度は藤子(ふじこ)たちを探そうー
そのハルの提案に、皆は明日旅立つことを決めるのだった。


だがー安吾もまた、花が出ていくことに気付いていた。
彼は井戸を掘りに来た彼女に、詰め寄った。
そしてー言った。

逃がさない、死ぬまで働け。
その体で償えー!!

その剣幕に、花は怯えながらも抵抗する。
彼女は思い切り安吾の腕を振り払った。
その瞬間ー爪が、安吾の頬をひっかいてしまった。

安吾の表情が変わる。
ヤバい!!
花はそう思いながらも、溢れる言葉を止められなかった。

火に油を注ぐーそれは彼女の悪い癖だった。
あんたとは話なんかできない。
目障りだろうから出ていってやる。放っといてくれー

そう言ったところで、彼女は気が付いた。
安吾の顔色は、真っ白になっていた。
ぞっとした花に、彼は掴みかかる。

そうして安吾はそのまま花を引きずった。
彼は離れへと、向かっていく。
花の抵抗も空しく、彼女は荒々しく離れの中に突き飛ばされた。

安吾が扉を閉めるー
そうして彼は言った。
償えと言ったよなー

その顔には、表情がなかった。
2人は見つめ合い、花は恐怖を感じるのだった・・。




















安吾の渇き。


今回もなかなか鬱屈した回でした。
読んでて息苦しかったです・・特に後半。

ここまで読んでいる者に肉薄するのは、本当田村先生の才能の成せる技だと思います。



さて、前回花の父親が貴士だと判明しました。

そのことで居場所を失う花。
皆の本心は分からないですが、花自体が避ける素振りを見せているので、皆近寄れないのでしょうね・・。

春のメンバーは余り気にしていない様子。
ハルもああは言うけど、花に責任とかは一切感じていないようだし。

むしろ自分も大人に振り回されてきたので、気持ちを理解できる立場でしょう。
確かに嵐のことはずるいな、とは思うだろうけど、それだって花がやったことではないですしねぇ・・。


秋のチームはどうなんでしょうね。
蘭が戸惑っている手前、あんまり花の味方につけないっていう感じかなーと思ってます。

皆花の良さだって見てきた訳ですからね。
彼女を責める人はいないように思います。

朔也もあんな調子だったしw


ただ新巻同様、蘭も気持ちの整理がまだついてないように見えます。
彼女も花を気に入っているように見えていたので、きっと事実との折り合いがつかないだけなんじゃないかなぁ・・。

本気で花を責める気はないと思います。
秋のチームは、総じてそんな人たちではないでしょう。


で、新巻も今回自分で気持ちの折り合いをつけていましたね。
彼の言葉は本当に優しいですね。
意固地な花が、彼に惹かれるの分かる気がします。


でも、今回の彼の言葉で、わたしの中の貴士への思いも少しすっきりしました。
確かに花をここに送ったことや夏のAにしたことは全て受け入れることはできません。

ただ、その裏には確かに未来に対する強い使命があったのですよね。
それだけは、要も貴士も美帆も、皆変わらないと思います。

そのことを思えば、どこか彼のしたことを認められるような気もしました。
許せはしませんよ。でも、そこに悪意がなかったと思えば、ただ事実は受け入れられる気がしたのです。

きっと新巻もそういう風に感じたのではないかなーと思いました。
その結果に満足はできません。未来に来たかった訳ではないですからね。

でも彼らをここへ送った人たちには、悪意はなかった。
彼らを送ることに決めた両親も、彼らに生きてほしいと願ったからそうしたのです。

そう思うと、少し気持ちが落ち着く気がします。
もうこの状況を変えられない以上、どこかそうやって自分を納得させていくしか方法はないのかもしれませんね。

今回の新巻の言葉は、そういう生き方を示唆してくれたと思います。
やっぱり15年一人で生きて来た人の言葉の重みは違います。

この言葉、安吾たちにも聞いてほしかったですね。。





さて、そして夏のAたち。

彼らも事情を知った訳ですが、皆どう思ったのでしょうね。

あゆは淡々と受け入れていましたね。
虹子もそういうタイプかな、と思います。


ただ残りの5人は、どうでしょうね。
花を恨むかは分かりませんが、すんなりは受け入れられないのではないでしょうか。

誰もが皆、新巻のように考えられないことも分かります。
特に、彼らと新巻は、経験の差が違います。

夏のAは、まだこの世界に来て3か月ちょっとです。
気持ち的にも落ち着いていない中でのこの事実は、やっぱりショックだったのではないでしょうか・・。


でも安吾と涼以外は、それでも花に直接当たるようなことはないのかなぁと思います。
きっとのび太に対する無関心みたいな態度が近いんじゃないかなぁ・・と。

花がいじめられるのを見て、胸糞悪いとは思う。
でも止める気もない・・今回の井戸掘りで朔也以外声をかけないのを見ると、そんな感じなのかなあと思いました。

それになんだかんだ言っても、安吾はリーダーですからね。
彼に逆らうことは余りしたくないのかな、とも思います。

逆に次回以降花を殺そうとすれば、その立場が崩れる危険もありますけどね。
本当に彼らは薄い硝子板の上に立っているような、不安定な状況で見ててハラハラします。

一線を越えないといいのですが・・。



それにしても、安吾は危険な精神状況ですね。
最後の顔、表情が全くなくてぞっとしました。

後は、今回の性に関心が出て来たような素振りは何なのでしょうね。
鬱屈した感情が、性的欲求を呼び起こした・・ということなのかな?

まさか花を襲ったりしませんよね・・。
あゆには避けられたけど強引だったし、ちょっと心配です。

涼はその辺分かっていて、妊娠のリスクなども説明していましたが、果たしてうつろな状態の安吾に響いたのかどうか・・。

さすがにレイプはマズいですよ。重罪です。
それこそ安吾の立場なんて、一気に堕ちてしまうでしょう。

そこだけは越えないでほしいと願います。
花だって、どれだけ傷つくか・・。
そしていつか再会するだろう嵐だって、どれほど辛いか・・。

どうかそんな展開にならないことを願います。
でも今回のラストはその危険性を感じさせますね・・。

渇きって、怖い・・。



最後に、今後について。

ようやく夏のAから離れることを決意した花。
くるみのことが心配だから我慢していたのでしょうが、もう限界ですよね。

皆も彼女が安吾にいじめられるのを見るのは辛いだろうし、一旦離れるのは賢明な判断だと思いました。


それにしても、ハルが来ると言ったのは意外。
小瑠璃のことがあるから、来ないと思っていました。

でもやっぱり、彼も花が心配というのがあるのかな、と思いました。
小瑠璃とは永遠の別れになる訳でもないし、彼女は夏のAがしっかり守っていますもんね。
心配という点で見れば、花を選ぶのも妥当でしょうね。

というわけで、次回以降は春の残りのメンバーを探す旅に戻ることになるのかな。
藤子たちの安否は心配なので、早く明らかになってほしいものです。

それか、先に角又たちと合流する展開もあるかな?
でも今の彼らがどこにいるか分からないので、合流は難しいかな。。

先に夏のBと会う展開もあるかもしれないし、そう考えるとやっぱりここの鬱屈した生活よりは明るい展望が見えますね。


夏のAと分かり合えないのは残念ですが、そういうこともあると思います。
これにめげずに、また元気な花に戻ってほしいですね。








さて、次回は花と安吾が正面衝突でしょうか。

怒りに我を忘れた安吾・・花に何をしようとしているのでしょうか。
殺そうとするのか、それとも襲うのか・・どちらにしろ、かなり危険な状態です。

誰かが花を助けてくれるといいのですが・・。
手遅れにならないことを祈ります。

次回も楽しみです☆