前回、シックスとの関係と刹那の病気の真相を語った本城。
彼は狂気とそれに抗えない自分への失望の中で、自死を選んで消えていきました・・。

続けて2人の身近な死を経験した弥子。
彼女は精神を保ったまま、戦いに臨み続けることができるのでしょうか・・。

そしてついに葛西の犯行の瞬間を捕らえた警察。
新しい血族に仲間を奪われた者たちの思いは、葛西を倒すことができるのでしょうかー?!

感想です☆





出会えて・・~第183話 「棄【ほうき】」





※以下、ネタバレあり※










◎あらすじ◎

刑事たちと葛西(かさい)は、にらみ合った。

笛吹(うすい)はネウロから、葛西の手口について聞いていた。
外部のタンク車から水道管につなぎ、水の代わりに可燃液を送りこむ。
そしてそれをポンプ室で、一気に圧力をかける。

高層ビルのポンプの性能は、強力だ。
可燃液はものの数秒で水道管を伝わり、ビルの隅々まで行き渡るー

後は可燃液が水道管からあふれ出すタイミングで、配電室をいじり全ての電源をショートさせればいい。
ビルすべての電気系統から飛んだ火花は、ビル全てにぶちまけられた可燃液に引火して、ビル全てを同時に火の海にしてしまうのだー。

その説明を聞いた葛西は、全ての推測が当たっていることをほめる。
だが・・彼は問う。
なぜここが分かった?東京にビルなんて、星の数ほどあるのだ。

すると笛吹は、簡単なことだ、と話した。
彼は可能性のあるビル全てに、捜査員を配置していたのだー。

皆が東京全てのビルを調べ、その中から笛吹が絞り込む。
この犯行には、下準備に1時間ほどはかかる。
だからその間に発見連絡をし、後は包囲と一般人の避難を済ませただけ・・。

笛吹は淡々と語るが、話を聞いた葛西は息を呑んだ。
この期間でそれだけのことを行うには、警察を総動員しなければ不可能な作業量だからだ。

だが警察全体で動けば、必ず葛西は気付いていただろう。
つまり・・笛吹たちは少人数で、それをやってのけたのだ。

彼は感心し、笑みを浮かべた。
笛吹直大(うすいなおひろ)、警戒すべきと思っていたがここまでとはー!!

ーそこで葛西は、煙草に火をつけた。
その動きを見た刑事たちは、銃の引き金に手をかけるー
その瞬間、葛西はマッチの火を床に落とした。
一気に炎が燃え上がり、刑事たちは巻かれてしまう。

その間に、葛西の姿は消えていた。
刑事たちは焦るが、笛吹が皆を一喝する。
落ち着け、こんなときの配備も万全だ!!

彼の言葉に、皆呼吸を整える。
笛吹は炎の先を見つめた。
確実に追い込むぞ。勝利は私が約束する!!


その頃ー
石垣(いしがき)と等々力(とどろき)は、遅れて現場へと向かっていた。

車中、等々力はうつむいたまま一言も話さない。
その様子を見ていた石垣は、釣りゲーム大会のときの罰ゲームを思いついた、と突然声をあげた、
等々力はまだそんなことを言っているのか・・と呆れたように彼を見やる。

笹塚(ささづか)が亡くなったこんな時に・・。
そう拳を握りしめる等々力の横で、石垣は明るい声で言った。
発表!今日からお前は、俺のことを先輩と呼べ!!

ーその提案に、今度こそ等々力は目を見張った。
すると石垣は、笹塚の言葉を忘れたのか・・と彼女に問うた。

笹塚は、現場では迷っている暇はない、と話していた。
迷ったときはただ行動するだけだーと。

・・自分たちは、警察だよ。今こそあの人の言う通り、余計なことを考えずに目の前の仕事を目いっぱいやろうー。
そう話す石垣の顔は、いつになく真剣だった・・。

だからウジウジしてないで、いっそ自分のことを先輩と呼んだらいい。
そう言われた等々力は、石垣に励まされたことに恥ずかしくなる。
言われなくてもちゃんと仕事しますよ、先輩!!

2人はいつもの調子に戻り、現場へと急ぐのだった・・。


一方ー
探偵事務所に戻った弥子(やこ)は、ネウロに本城(ほんじょう)のことを伝えた。

やっぱりあの男は敵とつながっていたか・・。
考え込むネウロの横で、弥子はうつむいたまま動かない。

ーいずれにせよ、我々はシックスを探すのみ。
その様子を気にせず、ネウロは語る。
人間共は我が輩の力を借りずとも、血族に抗える力と覚悟を身に着けつつある。
今こそ我々は・・

そう言って弥子の方を見たネウロは、ようやく弥子の異変に気付いた。
彼女は下を向いたまま、震える声で呟く。

もう嫌だ・・。

その瞳には、涙が浮かんでいた。
弥子は声を振り絞りながら、笹塚も本城も自分の目の前で死んでしまった、と話す。
ネウロはそれに対し、自分の不覚ではあったが、2人共死は覚悟していたはずだ・・と答える。
だが弥子には、そんなことどうでも良かった。

理由なんて、どうでもいい!!
彼女は声を荒げ、ネウロの言葉を遮る。

ネウロには、大事な人を目の前で亡くす痛みなんか分からない。
仲良くなって自分の中で欠かせない人になっても、皆事件に巻き込まれて消えていってしまう・・。

探偵の真似事なんてしなければ、こんな思いをすることもなかったのに・・!!
それを聞いたネウロは、眉を動かす。
・・何が言いたい?

そこでー弥子は言った。
こんなことなら、最初から出会わなければ良かったと。
皆とも、あんたとも・・!!

ーその言葉は、2人の間を割いた。
息を吐きながら、弥子はー空気が変わったことを感じる。
彼女はネウロの方を見やり・・その表情を見て驚いた。

ネウロはー人間に対して興味を失くしたときの、あの表情を浮かべていたのだ。
敵に向けていた顔と同じ・・あの表情が今自分に向けられている・・。
弥子はその事実に、ショックを受けるー

するとネウロは立ち上がった。
・・我が輩、今まで貴様を奴隷として扱ってきたが、貴様には人と接する能力があり逆境に萎えない向上心があり、それらについては一定以上の敬意を払ってきたつもりだー。

そう話す彼の表情が歪む。
だがまさか・・ここまで腑抜けだとは思わなかった。
弥子はその言葉に返す力もなく、ただ耐える。

そんな彼女に、ネウロは告げた。
消えろ、桂木弥子(かつらぎやこ)。
彼はドアを開け、促す。
腑抜けの奴隷に用はない。望み通りここを去って、2度と我が輩の視界に現れるなー。

そしてー彼は深く頭を下げた。
今までご苦労だった。腑抜けの未来に、精一杯の幸あれー。

それは、完全なる拒絶だった。
弥子は歯を食いしばり、ネウロの横を駆け抜ける。
いつのまにかドアにかかっていた看板は割れ、桂木弥子の文字が床に転がっていた・・。

ネウロは彼女の足音が遠ざかるのを聞きながら、息をつく。
・・さて、次の奴隷を探さねば。


ー町を駆けながら、弥子は溢れる涙を拭った。
彼女の頭の中には、シックスの言葉が巡っていた。

ー生かしておいた方が、より残酷で楽しい結果になりそうだ。

・・その通りだった。
弥子は逃げ出し、ネウロは彼女を見限った。
その事実に胸を痛めながら、彼女は夕焼けの中を1人走るのだった・・。




















訣別。


今回は警察が葛西と戦いを始めたなか、弥子がネウロの元を去る話でした。

弥子・・可哀想で、泣きそうになりました。
2人も立て続けに大事な人を失って、辛くない訳がないですよね。
ネウロの気持ちも分かるとはいえ、この展開は苦しすぎでした・・。



さて、まずは警察と葛西の戦いから。

葛西のトリックが、思った以上に大がかりでまずはそこにびっくりしました。
まぁビル1つ燃やしているのですもんね。小細工でどうにかなるレベルじゃなかったか。

その大がかりさ故に、犯行が事前にバレてしまったのは彼の手落ちですね。
いや、それを踏まえても笛吹の手腕は凄すぎる訳ですが。

ネウロにトリックを聞いたのが、笹塚が亡くなった日ですよね。
そこから迅速に準備し刑事たちを集め、東京中のビルを洗ったというのだからすごすぎます!!
本当にここ最近の彼の開眼ぶりは目を見張るものがありますね。
シックスの息のかかった警視総監なんかより、笛吹にトップに立ってほしいものです。

葛西の逃走を見て尚、怖気づくことがないのも素晴らしいと思います。
この調子なら、葛西を追い詰めることも十分に可能性があるでしょうね。
人間の怒りを、葛西には知ってほしいです。

人間の命は、決して血族の玩具なんかではない。
大事な仲間を奪われて涙するほど、彼らは弱い存在でもない。
そのことを笛吹たちには葛西に叩きこんでほしいと願います。

この戦い、どんな結末を迎えるかー
非常に楽しみです!!





さて、後は弥子とネウロの件ですね。

前回の弥子のショックの受け方を見てマズいとは思っていましたが、やっぱり彼女には受け止めきれませんでしたね。
当然でしょう、ネウロと違い、彼女は2人の死を間近で見ています。
ショックを受けるなという方がおかしいでしょう。

その抱えきれない気持ちを、ネウロに ぶつけたくなるのだって分かります。
出会わなければ・・どうしたって、そう考えてしまいますよね。

出会っていなければ、別れなんて経験せずに済んだ。
こんな苦しい思いだってしなくて済んだ。

・・でも、それはきっと笹塚や本城に関わった皆が思ったことです。
それでも前を向いて、笛吹たちや石垣たちは敵に向かっているのですよね。

ただ弥子は、死を目の前で見てしまった。
そしてその気持ちを吐き出す先がなかった・・
そこが彼らと違うところでしょう。

彼女1人の力では、血族なんて到底倒せない。
そんな自分ではどうしようもできない歯がゆさや苦しさも、彼女を現実から遠ざけた一因だったと思います。

ネウロにそういう心の動きが読めればいいのでしょうが、それを彼に望むのも酷というもの・・。
この対立は、避けられなかった気がします。
ネウロだって喪失感を抱えて苦しいはずなのに・・うーん、上手く行かなくて辛いですね。

それにしても、ネウロのの怒りの表情と、弥子の必死に涙を堪える表情は見ていて本当に辛くなるものでした。
互いに傷を負っているのに、その傷を深めることでしか気持ちをぶつけ合えないのは苦しいです。。

きっとこの先弥子は自分自身と向き合って、血族と今後どう戦っていくのか決めるのでしょう。
この訣別はその過程に必要なものなのでしょうが、2人のあんな表情初めて見たので胸が痛いなぁ。
ネウロもこれを機に、人間との関わり方をもう一度見つめなおしてくれるといいのですが・・。

再び2人が一緒に揃うところを、今は静かに待とうと思います。
まだ傷は新しく大きいです。その傷が癒えないと、2人がシックスとの最終戦に進むことはできないでしょう。

落ち込んでも何度だって立ち上がってきた弥子です。
今回も彼女なりに考えて、きっと前を向いてくれるだろうと信じています。

2人が仲直りする日ー待ち遠しいですね。





最後に、石垣と等々力について。

今回は石垣の成長にも、泣きましたよ。
これは笹塚嬉しいだろうなぁ。内面は変わらずですが、先輩として頑張ろうという気概が見えてこっちも嬉しくなりました。

笹塚の死は、後ろ向きな面ばかりではないのですよね。
こうやって意志を受け継いで、成長する者だっているのです。
悲しいばかりの出会いではなかったー
そう思わせてくれる良いシーンだったと思います。

まぁ当分は等々力に引っ張られていくばかりなのでしょうが、それでもこうやって成長した姿を見せてくれるのは良いものですね。
きっと石垣もシックスを捕まえるのに一役買ってくれるはず!
今度は彼が血族の鼻を明かしてくれることー期待しています!!











さて、次回は葛西との戦いの続きと、失意の弥子・・といった感じでしょうか。

弥子はどうやって自分自身と向き合うのでしょうね。
以前父親を失ったときはネウロとの出会いで励まされたけど、今回はそのネウロと対立してしまったから、自分の力で立ち上がるしかないでしょう。
彼女がどんな方法を取るのか、気になります。

また葛西と警察の戦いは、いよいよ本番ですね。
笛吹の作戦と葛西の能力ー
どちらが相手の上を行くのか、非常に楽しみな展開です!

色々波乱の続く今巻ですが、最後まで見守りたいと思います。


次回も楽しみです☆