前回、殲滅作戦が始まり、追い詰められていくイシュヴァ―ル人。
彼らは降伏を申し出ますが、ブラッドレイはそれを聞き入れませんでした。

憎しみは膨らみ、また作戦の暗部を知る者は更なる悲劇を生もうと画策します。
イシュヴァ―ルの終焉のときーついに最後の戦いが始まります・・。

感想です☆




第61話~ 「イシュヴァ―ルの英雄」




※以下、ネタバレあり※










◎あらすじ◎

ああ、いい音だー。
キンブリーは戦場に鳴り響く銃声や悲鳴を聞き、舌なめずりした。

脊髄が悲しく踊り、鼓膜が歓喜に震える。
そしてそれを、常に死と隣り合わせのこの場所で感じることができる喜びー
なんと充実した仕事か!!
彼は錬金術を発動するー

ーその業は、あっというまに町の中心部を破壊した。
一発でここまで・・
軍人たちは息を呑み、感嘆する。

だが当のキンブリーは、イマイチ美しくない・・と不服そうだった。
彼は、仕事なのだから美しく完璧に戦おうーと周りの軍人たちに声をかける。
そしてその内の1人を盾に取ると、仕掛けられた爆弾の攻撃をよけた。

黒焦げになった軍人を捨てると、キンブリーは息をつく。
しっかりしてください、私を護るのがあなた方の仕事でしょうー?
彼の無慈悲な動きに、軍人たちは恐れをなし言葉を失うのだった・・。


その頃ー
スカーは家族を探して必死に走り回っていた。

途中で出くわす軍人たちをなぎ倒し、彼はひたすらに家族の名を呼ぶ。
すると煙の奥から、彼を呼ぶ声がしてスカーは足を止めた。

無事だった・・!
スカーは安堵し、皆と合流する。
そして西からの攻撃が酷いから、東側へ逃げようと話し合った。

どうやらこの地にも、国家錬金術師が来ているらしい・・。
一般兵なら倒せるのに・・とスカーは歯噛みする。

その時、兄がスカーに書物を渡した。
彼は研究所はこれしか持ち出せなかったと言い、預かってくれるようにスカーに頼む。

戸惑うスカーに兄は、自分にもしものことがあったら研究が全部パーになるから・・と話した。
彼は、武僧であるスカーの方が生き残る可能性が高いーと考えていた。
自分なんて、震えが止まらないでいる・・

そう苦笑する兄を見たスカーは、書物を受け取る。
と、2人は近くの建物に1人の長髪の男が立っているのに気が付いた。

その男ーキンブリーを見たスカーは、国軍か?!と身構える。
だがキンブリーの方が、素早かった。
彼はスカーたちを見つけると、掌をかざすー

それを見た兄は、咄嗟にスカーの前に出た。
キンブリーの錬金術により、彼らの周りの地面が盛り上がっていく。
そして大きな爆発が巻き起こった。

その爆撃はスカーたちを直撃し、至る所から悲鳴があがった。
その声を聞きながら、キンブリーは身震いする。
・・良い音だ!!

彼は手中にある賢者の石を握りしめた。
素晴らしい・・素晴らしい、賢者の石!!

ーその後爆風が収まってくると、兄は起き上がった。
彼は血を流しながらも、スカーの姿を探す。
そして見つけて歩み寄ると・・息を呑んだ。

スカーは機を失っていた。
そしてその右腕がー爆風によって吹き飛ばされていた。

出血も多く、このままでは失血死してしまうー。
兄は一生懸命手当を施すが、血は止まらない。吹き飛んだ右腕も見つからない。

彼は焦り、家族に助けを求めた。
だが周囲からは誰の声もせず、動く者もいない。
その時ー兄は、自身の腕に目をやった。

彼ははっとすると、迷う間もなくスカーの身体に手を添えた。
そして祈りをこめながら、弟に別れを告げる。
生きろ、死んではいけない・・。

兄はそのまま、スカーの腕に自分の腕を錬成するー。

ーどのくらい時間が経ったのだろうか。
スカーは周囲が騒がしいのを感じて、目を開けた。

どうやら自分は助かったらしい。
そうだ、兄者が前に出てかばってくれたのだ・・。
ぼうっとする彼に気付いたイシュヴァ―ル人たちが、傷が開くから動くな、と彼に声をかける。

スカーの眼には、兄の右腕も映っていた。
ああ、よかった。兄者も無事か・・。
だがその瞬間、彼は目を見開いた。

兄者の腕がー自分の腕になっていたのだ。
彼はそれに気づき、絶叫する。
なんだ、これはあああああ!!!

その悲鳴に、周囲にいた人たちは皆彼の方を向いた。
手当に当たっていたロックベル夫妻は、急いで彼に鎮静剤を打とうとする。
けれども鎮静剤はちょうどさっき使い切ってしまっていた・・。

スカーは唸りながらも、思い出せる限りの記憶を掘り起こす。
自分をかばった兄者。自分たちに銃を向けた軍人たち。そして国家錬金術師ー。
許さん・・。貴様らに、貴様らに・・。

彼は必死の思いで立ち上がると、近くにあったナイフを手に取った。
周りのイシュヴァ―ル人たちが止める暇もなかった。
彼はそのナイフで、ロックベル夫妻に切りかかるー

・・そして2人を殺害したスカーは、傷だらけの身体で治療所を後にした。
彼はふらふらと丘の上を目指し、そこから見える景色を見て崩おれた。
彼の故郷はもはや焼け野原となり、彼の大事な人たちも全ていなくなってしまった。

全てを失ったー。
スカーはどこにもぶつけられない思いを、ただひたすら叫び続けるのだった・・。


その後、カンダ地区は制圧された。
キンブリーたちは上層部でも噂になっていた、ロックベル夫妻がいた病院へと向かう。

だがそこは薬も設備もなく、とても病院などとは呼べない場所だった。
軍人の1人が、奥で重なって倒れている夫妻を見つけ、キンブリーを呼んだ。

彼らは既に死亡していた。
イシュヴァ―ル人にやられたのだろうか・・。
手間かけさせやがって、と軍人たちは舌打ちする。

だがキンブリーは、夫妻に敬意を払った。
戦い敵を倒すのが、軍人の本分。人の命を助けるのが、医師の本分。
彼らは意志を貫き通した。私は意志を貫く人が大好きですよー。

彼はそう言うと、夫妻の亡骸の横に落ちていた写真を手に取り眺めた。
それは、ウインリィと3人で撮った家族写真だった。
残念、生きているときに会いたかった・・。
キンブリーは1人、そう呟くのだった。

一方ダリハ地区では、マスタングたちがついにイシュヴァ―ル人の最後の1人を見つけていた。
これで殲滅は完了する・・。
マスタングはグローブをはずしながら、最後に残った老人に一言尋ねる。
あなたが最後だ。何か言いたいことはあるか?

その問いに、老人ははっと笑いを漏らした。
ー恨みます。
彼はそう言い、真っすぐにマスタングを見据える。

そうか・・。
マスタングは老人に、自身の手をかざすのだったー。


ーこうして、殲滅戦は終了した。
グランからの報告で、軍人たちには戦争の終わりが告げられる。
だがそこには何の感慨もなく、ただ本当に終わっただけだった・・。

軍人たちは皆呆然とするが、そんな中でヒューズは1人安堵の息をついた。
ああ、やっと帰れる・・。

それから軍人たちは食事をし、酒を酌み交わした。
マスタングも勧められて、酒の入ったコップを受け取る。

彼は自分を囲む軍人たちに、名前を訊いた。
そしてどこの隊だー?と尋ねると、軍人たちは皆吹き出した。

やっぱり自分たちのことを知らなかったー。
彼らはマスタングの隊の人間だった。
皆末端であったり補充されたりの軍人だったので、知らないのも無理はないーと笑う。

だがそれを聞いたマスタングはうつむいた。
情けない・・、長く戦っていながら、支えてくれた仲間の名も、死んだ部下の名もほとんど覚えていない。
ましてや手にかけたイシュヴァ―ル人のことなど、何1つだ・・。

だが軍人たちは、首を振った。
それでも・・あなたは自分たちを置いて逃げなかったし、その火力でいつも先陣を切って敵陣に斬り込んで、自分たちを無駄死にもさせなかった。
そこには信頼があった。

軍人たちはそう言って、笑みを浮かべた。
焔の錬金術師がいたから、自分たちは死ななかった。
自分たちにとっては、あなたは英雄だ。あなたのおかげで、これだけの兵が生き残れましたー。

そう感謝を述べる彼らに、マスタングは敬礼した。
君たちも・・生き残ってくれてありがとう。

そうして彼らは、戦地を離れることになった。
やっと家族の元へ帰れるー
皆苦い思いを抱えながらも、未来へ向かって進んでいくー。

そんな中、マスタングは今回の戦争を振り返った。
この戦いで、自分の若い理想は打ち砕かれた。
この国を護るなどと言っても、実際はたった一握りの人を守るだけで精いっぱいだ。
これだけたくさんの兵を守れた?これだけしか、自分は助けられなかったのだー!!

そんな自分に腹が立つ!
マスタングは、ヒューズにそう話した。

この戦いで、思い知った。自分はゴミみたいな人間だ。
だが・・ゴミにはゴミなりの矜持がある。
彼は表情を歪めながらも、その目を真っすぐ前に向けた。

1人の力など、たかが知れている。ならば自分は守れる人だけを守るだけ。
だが守った下の者は、そのまた下の者を守れるようになる・・。
それを聞いたヒューズはネズミ算だなと笑ったが、マスタングは青臭くても構わない!と言い切った。

理想とかきれいごととか人は言うが、それを成し遂げた時にそれはただの可能なことに成り下がる。
彼はヒューズに訴えた。
士官学校にいた頃のように、理想を語れよ。理想を語れなくなったら、人間の進化は止まるぞ!

まだ戦いが終わったばかりなのに、マスタングの中の闘志は消えていなかったー。
それを感じ取ったヒューズは笑いながらも、その決意に乗ることにする。

なら、この国丸ごと守るためには、ネズミの天辺にいなきゃならないなー。
その言葉に、マスタングは高台に立つブラッドレイを見た。
あそこはさぞかし気分がいいだろう・・。

彼は、ブラッドレイの位置に登り詰めることを決めた。
ヒューズもまた、そのためにマスタングを支えることを決める。
マスタングの青臭い理想が、神をも畏れぬブラッドレイが作り上げた国をどう変えていくのかが見てみたいー。
ヒューズもそう考え、ブラッドレイを見つめるー。

その視線に気づき、ブラッドレイは下に目を向けた。
自分の下に並ぶ軍人たちー
その中で、この喧噪に酔いしれていない者は彼しかいなかった。
そのため、ブラッドレイはほう・・と感心した。

私を・・いや、既にその先を見ているのか・・。
彼はマスタングの瞳に燃える闘志を見逃さなかった。
焔の錬金術師ー
ブラッドレイは彼のことを、深く胸に刻むのだった。

一方ー
軍上層部でも、ささやかな祝宴が開かれていた。

後は残党狩りだけだから、君の力を借りるまでもない。ご苦労だった・・。
上層部の軍人たちはキンブリーの健闘を称え、苦労をねぎらう。

そこで賢者の石の効果を訊かれたキンブリーは、素晴らしかった・・と笑みを浮かべた。
賢者の石は等価交換の法則を無視し、予想以上の錬成を行えた。
彼の報告を聞いた軍人たちはその答えに満足し、石を返すように求める。

だがキンブリーは、手に持った賢者の石をひょい、と口に放り込んだ。
そして呑み込んでしまうー
それを見た軍人たちは仰天し、立ち上がった。

何てことをするんだ!何を考えている!!
口々に彼を罵る軍人たち。それを見ながら、キンブリーは笑った。
さてこれで・・賢者の石を私が持っていると知っているのは、あなた方だけですねー?

その目が、怪しく光る。
瞬間、彼は軍人たちに向けて錬金術を放ったー。

ーその音は、建物の外にも響いた。
何があった・・?と戸惑う門番たちの前に、やがてキンブリーが1人出てくる。
彼は目的を遂げ、満足して高笑いしたー。

・・その異様な姿に、門番たちは言葉をかけることができなかった。
だがそんな中で、一連の出来事を見ていたエンヴィーはただ1人笑みを浮かべた。
やるねぇ、紅蓮の・・。

ー出発の日。
マスタングは、小さな墓を作っているホークアイの姿を見付けた。

帰らないのか?
そう尋ねると、ホークアイはイシュヴァ―ル人の子供を埋めていたのだ・・と話した。
子供は1人で、道に打ち捨てられていたのだというー。

それを聞いたマスタングは、帰ろうーと彼女に手を差し出した。
戦いは終わった・・。

だがホークアイは首を振り、自分の中ではイシュヴァ―ルの戦いは終わっていない、と口にした。
いや、一生終わらないだろう。
マスタングを信じ、父親の研究を託したのは自分。国民の幸福を願い、士官学校に入るのを決めたのも自分。
それが望まない結果になろうとも、事実から逃れることはできない・・。

否定し償い許しを乞うなど、殺した側の傲慢だー。
彼女はそう言うと、お願いがあるーとマスタングに震えながら頼んだ。

私の背中を、焼いて潰してください・・。

それを聞いたマスタングは目を見張り、そんなことできる訳がない、と叫んだ。
だがホークアイは、罪を償えないのならせめてもう2度と次の焔の錬金術師を生み出してはいけないのだーと訴えた。
その瞳は真っすぐにマスタングを捉えるー。

父と錬金術の誡めを下ろし、リザ・ホークアイ個人になるためにお願いします。
彼女の決意は強かった。瞳の中にそれを見て取ったマスタングは息をつきーグローブを外す。

どれくらい焼けばいいのか・・火傷の深度も範囲も思いのままになってしまった。
皮肉なものだな。この戦いで、人を焼くのに慣れすぎたー。
彼はホークアイの背中に、手をかざすー。


その後東方司令部に配属されたマスタングは、信頼できる部下たちを集めた。
通信技術に長けたフュリー、恐ろしいまでの記憶力を持つファルマン、士官学校をトップの成績で卒業したブレダ、体力と腕前に秀でたハボック。
そしてー

今日、彼の前にはホークアイが立っていた。
士官学校を卒業した彼女は、戦地であんな思いをしながらも軍人で生きることを選んだ。
面接に来た姿を前にして、マスタングは得意分野は何か?と問う。

するとホークアイは、銃だ、と即答した。
銃はいいです。剣やナイフと違って、人の死に行く感触が手に残りませんからー。

その答えに、マスタングは彼女を見つめた。
欺瞞だな、そうやって自分をごまかして手を汚し続けるのか?
ホークアイはうなづき、そうだ、と答えた。
手を汚し血を流すのは、自分たち軍人だけでいいー。

それが、彼女がイシュヴァ―ル戦で見つけた答えだった。
錬金術師が言うように、この世の理が等価交換で表せるのなら、新しく生まれてくる世代が幸福を享受できるように、その代価として自分たちは屍を背負い血の河を渡るのだー。

ーそれを聞いたマスタングは、立ち上がった。
君を私の補佐官に推薦しようと思う。
彼はそう言うと、ホークアイに背中を守ってもらいたい、と告げた。

それは、いつでも彼を背中から狙えるということと同義だった。
私が道を踏み外したら、その手で私を撃ち殺せ。君には、その資格がある。

それでもついてきてくれるか・・?
マスタングの言葉に、ホークアイは力強くうなづく。
了解しました。お望みとあらば、地獄までー。


同刻ー
スカーは荒れ果てた地をただあてもなく歩いていた。

家族も仲間も神の地も、守るものなど何1つなくなった。
だが・・この歩みを進める力は何だ?

彼は怒りに顔を変え、震える拳を見つめた。
これは・・復讐だ!!

この身1つ、ただ復讐のために・・生き延びてやる!!
彼はそう決意し、砂漠の地を去ることにするのだったー。




















イシュヴァ―ル戦の結末。

今回は殲滅戦が終わり、マスタングたちが戦いの後を歩み始める話でした。
重く長く続いた戦争が、終わりました。
余りに救いのない結末・・
スカーの姿を見るのが辛くてたまりませんでした。

戦争って、こうやってただ何となく終わり、終わった後には何も残さないのでしょうね・・。
余りに理不尽で、何もない。
戦争というものの本質がよく分かりました。これを描き切った荒川先生には、尊敬の念しかありません。

やっぱり戦争は勝者も敗者もただ失うばかりで、精神的にも肉体的にも苦しみを伴うものですね。
もう2度とこんな悲劇を起こさないよう、マスタングたちに期待したいと思います。
そして次の世代であるエドたちにも・・。

ここで戦争の全てを知れたことは、エドにとっては良かったと思います。
辛い話でしたが、だからこそ自分たちがホムンクルスを止めなければいけないことがはっきりとしたでしょうからー。

彼らにとっては、ウインリィの両親を失った戦争でもありますからね。
きっとホークアイが全てを明かしてくれた意味を理解したことでしょう。

敵はとてつもなく大きいですが、絶対に倒さねばなりませんね。
この過去編を通して、エドたちも読者も改めて強くそう感じたはずです。
これ以上傷つき亡くなる人が出ないように・・新しい国を作っていってほしいと願います。



ではまず、スカーから。
今回の彼は、あまりに気の毒で見ていられませんでした。
彼の腕の件が明らかになり、彼がロックベル夫妻を殺した訳が明らかになり・・。
とても苦しかったです。

スカーの腕は、やっぱり兄が錬成して移植したものでしたね。
右腕だけ無くしたから、分解の錬成陣だけが残ったのか・・。
その後のスカーの行動を考えると、何とも皮肉なものですね。

兄が弟を命を賭けて守ろうとする姿は、涙なしでは見れませんでした。
兄だって生きたかっただろうに・・。それ以上に、弟のことが大切だったんだなぁ。

そしてスカーもまた、兄が大切だった。
小言を言ってはいたけど、誰よりも大事な人だったのでしょう。

そんな人が、自分に腕を残して死んでいった・・。
そりゃぁ発狂する気持ちも分かります。
他の家族も全て死んでしまったのですからね・・。到底受け入れられることではないでしょう。

ただその怒りを、ロックベル夫妻には向けてほしくなかった・・。
パニック故余り責める気持ちにはなりませんが、周囲にいたイシュヴァ―ル人たちの悲しい顔を見ているともう本当に辛くて・・。

2人は最後までイシュヴァ―ル人たちのために頑張ってくれた人たちだったのに、スカーはそれには気付けなかった。
家族を殺された彼にとっては、もうアメストリス人は全て敵だった。
今の彼に取って、国家錬金術師は全て敵であるようにー。

しかもそれって、元はイシュヴァ―ル人に対して軍人たちが取ってきた行動なのですよね。
彼らは間違っていると知っても、イシュヴァ―ル人だからというだけで全ての人たちを殲滅した。
そこにいる1人1人のことなど考えず、見もしなかった。

だからスカーの行動も、納得はいくのですよね。復讐という意味では。
でもよりによって手をかけた人物が、誰よりもイシュヴァ―ル人を理解しようとして尽力してきた人たちだった・・。
それが悔しくて仕方ありません。

結局この戦争では、両者は理解し合うことはできなかった。
その事実は重いですね。結局今に至っても、そこは解決していない訳だし・・。

ホムンクルスを倒し新しい国作りを目指す際には、イシュヴァ―ル人たちとも対話ができるようになっているといいですね。
色々納得できないものはあるでしょう。それでも次の世代のことを思えば、復讐のために生きるのではなく手を取り合うことも必要なはずです。

そのことに、互いが気付き合えるといいなと思います。
まずはスカーの傷が少しでも癒える時が来ることを、祈っていますー。




続いて、キンブリー。
今回も彼が他の軍人たちの中で余りに異種であるーというのがよく見えました。
特に今回は、彼が何を信念にして戦いに臨んでいるのかがよく分かり、非常に興味深かったです。

冒頭、キンブリーは自分の起こした爆発に対して美しくない・・と顔をしかめていました。
彼にとっては、美しいか美しくないかが大切なのですね。
こういうとこ、本当に他の軍人たちと違いすぎて理解できない・・。

ただこの件で、彼が1人戦場で涼しい顔でいられる訳は分かりました。
キンブリーにとっては、正義とか大義とかはどうでもいいことだったのです。

彼は感情というより、感覚の人なのでしょう。
大切なのは美しいか美しくないかで、それは好きか嫌いかーという価値基準で生きているということでもあります。

だからロックベル夫妻に関しても、軍人たちが迷惑に感じ辟易していたのに対し、彼だけは敬意を払った・・。
それは彼の感覚で見て、ロックベル夫妻の生き様が美しかったからです。

医師として最後までその本分を果たし、生涯にわたってそれを貫き通したー
その姿勢が、キンブリーは好きだった。

彼にとっては軍の立場とかどうでもよく、あくまで自分が好きか嫌いかなんだなー。
つくづく不思議で、読めない人です・・。

この感じだと、この先も彼はエドたちとホムンクルスの間をかき乱す存在となりそうですね。
まさに起爆剤・・爆弾狂のキンブリーとはよく言ったものです。
紅蓮の錬金術師の二つ名も、そこから来ているのでしょうねぇ。。

キンブリーが投獄されている理由は、最後の上層部の軍人たちを殺した件でしょう。
ですがホムンクルスがそのことを知っているとなると・・いつ出所してもおかしくないですね。
ではいずれ出てきたとき、彼はどちらの側につくのかー。

賢者の石を持っているとはいえ、彼の感覚に沿わない限りホムンクルス側につくとは安易に言えないでしょう。
でもマスタングたちにつく理由も、今のところ彼にはないか・・。
そうなったとき、キンブリーがどう動くのかはとても気になるところですね。

ただ敵となった場合は、彼の実力や無慈悲な面を鑑みると物凄く強敵となることは間違いないでしょう。
願わくば、そうならないことを祈りたいですね。
これ以上敵が増えるのは、本当に勘弁してほしいものです・・。

キンブリー、この戦いにおいてもっとも印象深かった人物でした。
再登場はいつとなるのか・・。
注視していきたいと思います。




最後に、マスタングたちについて。
彼はこの戦争で若い頃の希望を失いましたが、再び新たな希望を見出しました。
ただ傷つくだけではなく、踏ん張って闘志を絶やさない・・。
本当に彼はスゴい人です。

それを支えるヒューズも、眩しいですね。
彼を見ていると、本当に惜しい人を亡くしたという思いがぬぐえません。
一緒に新しい国作りにまい進して欲しかった・・。

辛い戦争だった。
でもその戦争を通してマスタングは自分の小ささを理解し、1人では成し遂げられないことがあると知った。

だから彼は守れる者を守り、その意志を皆に継いでいこうと決めた。
1人ではできなくても、思いを繋ぐ輪があれば、やがてそれは大きくなるー。
なんだか錬金術の真理に似ていますね。一は全、っていうのと。

確かに青臭い理想論だと思います。ブラッドレイも、そう一蹴するでしょうね。
でも現実にその言葉に呼応する者がいる。その思いに、救われる人がいる。
それだけでも、彼の理想には価値があると思います。

今回、彼が上を目指した理由が分かって胸がすっとしました。
是非、野望を叶えてほしいですね。
次の世代が、笑って仲良く過ごせる日が来るようにー。

そしてその思いは、ホークアイの思いと呼応した。
彼女もまた、他の仲間と共にマスタングの下で働くことを決めました。

そんな彼女に背中を託すマスタングの気持ちが、また熱いですね。
この2人には、男女とか越えた絆があるんだなー・・。
そのことも知れて、本当に良かったです。

これもまた、トップに立つ者の覚悟という奴なのでしょうね。
王の資格ーブラッドレイが信じるもの、リンが信じるもの、そしてマスタングが信じるもの。
それぞれの思いがこの先ぶつかっていくのかと思うと、ドキドキしますね。

辛い話ばかりの1巻でしたが、読むことができて良かったと思います。
本当に色々考えさせられる過去編でした。
改めて荒川先生には感謝の気持ちしかありません。

ここからはいよいよ未来を拓くために、エドたちやマスタングたちがホムンクルスとぶつかっていくことになります。
彼らが折れそうになる度に、この過去編を思い出すことになるんだろうなぁ。
辛くても、皆には踏ん張って乗り越えていってもらわなければなりませんね。

その先に明るい未来があると信じてー。
最後まで見守っていきます。







さて、次回からは過去編も終わり、本編に戻りますね。
ホークアイからイシュヴァ―ルの内乱について聞いたエドは、何を思ったのか・・。

またマルコーから全ての事実を聞いたスカーが、どう動くのかも気になりますね。
まさかマルコーを殺さないとは思うけど・・ちょっと心配(^^;)

ホークアイたちの異動も近づき、また新たな展開を迎える予感がしますねー。

次回も楽しみです☆